AIで作った3Dモデルを商用利用できるかどうかは、単純な可否では決まらず、①元にした画像が誰のものか ②使ったサービスの利用規約がどう定めているか ③できあがったものが既存の作品に似ていないか、という3つの層をそれぞれ確認して判断することになります。この記事では、その3層の整理の仕方と、公開・販売の前に踏んでおきたい手順を、公的資料を参照しながらまとめます。
本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。 個別の案件について判断が必要な場合は、弁護士など専門家にご相談ください。
※現在のFigmeeは、アップロードした絵やイラストからフィギュア風画像と3Dモデルデータ(GLB / 3MF)を生成・ダウンロードできるサービスです。実物の3Dプリント品の販売は準備中(Coming Soon)です。
「商用利用できるか」は3つの層に分けて考える
「AIで作った3Dモデルは商用利用してよいか」という問いは、実際には性質の違う3つの問いが束になっています。分けて考えると、確認すべき相手が見えてきます。
| 層 | 問い | 確認する相手 |
|---|---|---|
| 1. 入力 | 元にした画像を使う権利が自分にあるか | 元画像の権利者・自分自身 |
| 2. 契約 | 使ったサービスは商用利用を認めているか | サービスの利用規約 |
| 3. 出力 | できたものが既存の作品に似ていないか | 出力結果の確認・必要なら専門家 |
3層のうち1つでも引っかかっていれば、他が問題なくても公開・販売は見送る判断になります。逆に、この3つを順に確認していけば、判断できないまま止まってしまう状態は避けられます。
層1: 元にした画像が自作かどうかで変わること
いちばん影響が大きいのがここです。元にした画像の性質によって、確認の重さがまったく違います。
自分が描いたオリジナルのイラストの場合、その絵に関する権利は基本的に自分にあります。3D化して商用利用することについて、他者の許諾を得る必要は通常ありません。もっとも自由に進められるパターンです。
他者が描いたイラストを元にする場合は、その人の許諾が必要になります。イラストの制作を依頼して納品を受けた場合でも、契約で権利の扱いをどう定めたかによって、立体化や商用利用まで含まれるかが変わります。依頼時の取り決めを確認してください。
**既存作品のキャラクター(二次創作)**を元にする場合は、いちばん慎重な確認が要ります。権利者が二次創作ガイドラインを公開していることがありますが、平面のイラストと立体物とで扱いが分けられている例も少なくありません。立体化とデータ配布に特有の論点は二次創作イラストを3Dモデルにするときの著作権の考え方で詳しく整理しています。
写真を元にする場合は、写真そのものの権利に加え、写り込んだ人物や、対象となった立体作品・建築物などの扱いも関わってきます。自分で撮った写真であっても、被写体側の確認が必要になる場面があります。
権利関係の基礎の部分は3Dモデルの著作権入門にまとめています。なお著作権法の条文そのものは、e-Gov法令検索で全文を確認できます。
層2: 利用するサービスの規約で見る5つの観点
AI生成サービスの利用規約は、サービスごとに内容が異なります。「AIで作ったから自由に使える」わけでも、「AIで作ったから使えない」わけでもなく、契約で何と書かれているかが出発点です。次の5点を探して読んでください。
- 商用利用の可否(目安:10分)— 明示的に許可しているか、禁止しているか、条件付きか。
- 出力物の権利の扱い(目安:10分)— 生成物の権利がユーザーに帰属するのか、サービス側に留保されるのか、利用許諾という形なのか。
- クレジット表記の要否(目安:5分)— 表示義務がある場合、表示の方法まで指定されていることがあります。
- アップロードした画像の扱い(目安:10分)— 入力した画像がどう保存・利用されるか。学習に使われるかどうかや、その設定を変更できるかも確認対象です。
- プランによる差(目安:5分)— 無料プランと有料プランで商用利用の条件が違う場合があります。
規約は改定されます。長く販売を続ける予定なら、公開時に一度読んで終わりにせず、区切りのタイミングで再確認するのが安全です。読んだ日付と該当箇所を手元にメモしておくと、後から確認しやすくなります。
層3: できあがったものが既存の作品に似ていないか
3層目は、出力された3Dモデル自体の確認です。意図せず既存のキャラクターや作品に似た形が出てくることは起こり得ます。
生成AIと著作権の関係については、文化庁が2024年(令和6年)3月15日に文化審議会著作権分科会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめ、同年7月31日には「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を公表しています。同庁のページでは、2018年の著作権法改正で柔軟な権利制限規定が整備されたことに触れつつ、生成AIと著作権をめぐっては判例がまだ蓄積していない状況であり、関係者間の適切なコミュニケーションが重要であるという趣旨が示されています(出典: 文化庁「AIと著作権について」、2026年7月時点)。
つまり、この領域は「明確な線引きが確立している」とは言い難い状態にあります。だからこそ、次のような実務的な確認が効いてきます。
- 出力された3Dモデルを全周から見て、特定の作品を想起させる特徴が出ていないか確認する。
- 元にした画像が、そもそも既存作品に似ていないかを見直す(入力が似ていれば出力も似ます)。
- 判断に迷う場合は、公開・販売を保留して確認を優先する。
著作権制度そのものの解説や、相談先の情報は文化庁の著作権に関するページにまとまっています。専門家への相談窓口も案内されているため、判断に迷う案件では利用を検討してください。
販売の形態によっても確認範囲が変わる
同じ3Dモデルでも、どう商用利用するかによって関わる範囲が変わります。
| 販売・利用の形態 | 特に確認したいこと |
|---|---|
| 3Dモデルデータそのものを販売する | サービス規約でのデータ再配布の可否、販売プラットフォーム側の規約 |
| 立体グッズとして出力して販売する | 立体化について権利者の確認(二次創作の場合)、出力を依頼する業者の規約 |
| 画像・動画に使って広告や販促に使う | 商用利用の範囲、クレジット表記の要否 |
| ゲームやアプリに組み込んで配信する | 再配布・組み込みの可否、プラットフォーム審査の規約 |
見落としやすいのは、データの再配布です。自分で使うことは認められていても、データそのものを配ったり売ったりすることは別扱いになっている場合があります。データ販売を考えているなら、この点を優先して確認してください。
公開・販売前のチェック手順
最後に、実際に進めるときの順番です。上流から確認したほうが手戻りが小さくなります。
- 元画像の権利を確認する(目安:10分)— 自作か、許諾があるか、二次創作か。
- 二次創作ならガイドラインを読む(目安:30分)— 立体・データの扱いに言及があるかを重点的に見ます。
- 利用したサービスの規約を確認する(目安:30分)— 前述の5観点。日付とともにメモを残します。
- 出力物を全周から確認する(目安:10分)— 意図しない類似が出ていないか。
- 販売形態ごとの規約を確認する(目安:20分)— 販売プラットフォーム、出力業者、配信プラットフォーム。
- 判断がつかない点を書き出す(目安:10分)— 残った論点は、保留するか専門家に相談します。
すべてを完璧に確認しきることは難しくても、この順序で進めれば「どこが確認済みで、どこが未確認か」が自分で把握できる状態になります。判断できない項目を抱えたまま公開に踏み切らない、という運用が現実的な安全策です。
記録を残しておくと後で助かる
商用利用では、「そのとき何を確認したか」を後から説明できる状態にしておくことが、それ自体リスクを下げます。特別な作業は要りません。次の4つを保存しておくだけで十分役に立ちます。
- 元にした画像とその出所:自作なら制作データやラフ、他者の作品なら許諾のやりとり。日付が分かる形で残します。
- 規約を確認した日付と該当箇所:規約は改定されるため、「いつの版を読んだか」が重要になります。該当部分のスクリーンショットでも構いません。
- 生成に使ったサービス名と設定:どのサービスのどの機能で作ったのかを、モデルごとに記録しておきます。
- 出力物の確認記録:全周から見て問題がないと判断した時点のスクリーンショット。
これらは、万一問い合わせを受けたときの説明材料になるだけでなく、時間が経って自分でも経緯を思い出せなくなる問題を防いでくれます。シリーズで作品を出していくなら、1体ごとにこの4点をまとめておく運用を最初から作っておくのがおすすめです。
判断に迷ったときの選択肢
確認を進めても白黒がつかない論点は残ります。そのときに取れる選択肢は、おおむね次の4つです。
- 公開・販売を保留する(費用:なし)— いちばん確実です。判断材料が増えるまで待ちます。
- 形を変える(費用:制作時間)— 二次創作なら、オリジナル要素の比率を上げた別案に作り替える。
- 権利者に確認する(費用:時間)— 問い合わせ窓口がある場合は、事前に確認するのが最も確かです。
- 専門家に相談する(費用:相談料)— 販売規模が大きい場合や、継続的な事業にする場合は検討する価値があります。
やってはいけないのは、判断を保留したまま公開してしまうことです。デジタルデータは回収が難しく、いったん配布されたものを取り戻すことは実際にはできません。迷いが残るうちは、公開ボタンを押さないという判断が最も安全です。
よくある質問
Q. AIで作った3Dモデルに著作権は発生しますか。 A. 一律には言えません。AI生成物の著作物性については、生成過程における人の関与の度合いなどを踏まえた議論があり、文化庁の資料でも検討が重ねられています。判例の蓄積も途上とされているため、本記事では断定を避けます。実務上は「著作権があるかどうか」より、「元画像の権利」「サービス規約」「既存作品との類似」の3点を確認するほうが判断の役に立ちます。
Q. 自分のオリジナルキャラクターなら、商用利用は自由ですか。 A. 元画像の権利という点では最も自由な立場ですが、それだけでは完結しません。使ったサービスの規約が商用利用を制限している場合や、データの再配布を認めていない場合があります。オリジナルであっても、層2(規約)の確認は必ず行ってください。
Q. 二次創作の3Dモデルを無料配布するなら問題ありませんか。 A. 無料であることが免罪符になるわけではありません。権利者のガイドラインでは、有償・無償を問わず立体物やデータの扱いを個別に定めている例があります。まずはガイドラインの有無と、そこに立体・データの記載があるかを確認してください。記載がない場合の考え方は二次創作イラストを3Dモデルにするときの著作権の考え方で扱っています。
Q. サービスの規約に「商用利用可」と書いてあれば安心ですか。 A. その層についてはクリアですが、他の層は別です。規約が許可しているのはあくまでそのサービスとの関係であり、元画像の権利や、出力物が既存作品に似ていた場合の問題まで解決するものではありません。3つの層はそれぞれ独立していると考えてください。
まとめ
AIで作った3Dモデルの商用利用は、「入力」「契約」「出力」の3層に分けて確認するのが実務的です。元にした画像が自作なら層1は軽く済み、二次創作なら最も慎重な確認が必要になります。層2は使ったサービスの規約を5つの観点で読むこと、層3は出力物を全周から見て意図しない類似がないか確かめること。生成AIと著作権をめぐっては判例の蓄積が途上とされている領域でもあるため、判断がつかない点は保留し、必要に応じて専門家や公的な相談窓口を活用してください。繰り返しになりますが、本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。




