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比較・選び方

ガレージキットの複製費用と相場|自家複製と業者委託を比べる

ガレージキットの複製にいくらかかるのかを、シリコン型とレジンキャストの工程に沿って整理します。業者委託の実例費用、自家複製の内訳、部数による単価の変わり方、イベント頒布の現実までを出典つきでまとめました。

Figmee編集部公開日: 2026-08-14更新日: 2026-08-1425分で読めます
ガレージキット複製シリコン型レジンキャスト原型
ガレージキットの複製費用と相場|自家複製と業者委託を比べる

ガレージキットの複製費用は、大きく「型を作る費用」と「1体ずつ抜く費用」に分かれます。型代は部数に関係なく最初に一度かかるため、少部数ほど1体あたりの単価が跳ね上がり、部数が増えるほど単価が下がる——この構造を理解すると、見積もりの読み方が変わります。

この記事では、シリコン型とレジンキャストによる複製の工程、業者に委託した場合の実例費用、自家複製の内訳、そして部数による損益の分かれ目を整理します。複製は実物を扱う工程なので、ここで扱う内容はすべて外部の工房・サービスを利用する前提の一般的な話です。

※現在のFigmeeは、アップロードした絵やイラストからフィギュア風画像と3Dモデルデータ(GLB / 3MF)を生成・ダウンロードできるサービスです。実物の3Dプリント品の販売は準備中(Coming Soon)です。

複製とは何をする工程か

ガレージキットの複製は、原型そのものを売るのではなく、原型から型を取り、そこに樹脂を流して同じ形を必要な数だけ作る工程です。おおまかな流れは次のようになります。

  1. 原型を分割する。型から抜ける形にパーツを分けます。抜けない形状(アンダーカット)が残っていると、この時点で修正が必要になります。
  2. 湯口・空気穴を設計する。樹脂を流し込む口と、空気が抜ける道を決めます。ここの設計が悪いと、気泡が入って抜くたびに不良が出ます。
  3. シリコンで型を作る。原型を埋めてシリコンを流し、固まってから割って原型を取り出します。多くの場合は2面以上に分けた型になります。
  4. 樹脂を流して硬化させる。二液混合のウレタン樹脂やレジンを注入し、硬化を待ちます。
  5. バリを取り、検品する。湯口の切り落とし、気泡の補修、パーツの欠けの確認を行います。

このうち、費用の大部分を占めるのが3の型作りです。原型の分割と型の設計は職人の判断が要る作業で、しかも部数に関係なく一度は必ず必要になります。

業者委託の費用を実例で見る

抽象的な相場より、実例の内訳を見たほうが構造がつかめます。ある複製代行に25個の複製を依頼した記録では、元型製作代金112,000円、シリコン代93,000円、そして1体あたりの手間賃と材料費が4,100円で、合計336,875円(税込)という内訳が公開されています(出典: YZPハウス「RCベルグにガレージキットの複製代行を頼んでみた!」、2026年7月時点)。1体あたりに直すと1万3千円台です。

注目すべきは、同じ記録にある追加生産の条件です。同じ型で追加25個を作る場合、型代が不要になるため費用は102,500円、つまり1体あたり4,100円になります。単価が3分の1以下に落ちるわけです。

納期も押さえておきたい点で、この事例では見積もり連絡から最初のテストショット到着まで約1ヶ月、そこから25個の納品までさらに約1ヶ月、合計で約2ヶ月かかったと記録されています。イベントに合わせるなら、2ヶ月では足りず、原型完成の期限をさらに前倒しで設定する必要があります。

部数で単価がどう動くか

上の数値をもとに、型代を固定費、1体あたりの費用を変動費として整理すると、次のようになります。

部数型代(固定)1体分の費用合計の目安1体あたり
10個約20万円4,100円約24万円約2万4千円
25個約20万円4,100円約34万円約1万3千円
50個約20万円4,100円約41万円約8千円

※型代は上記事例の元型製作代金とシリコン代の合計をもとにした概算です。実際の金額はサイズ・パーツ数・形状で変わります。

この表が示すのは、「少部数ほど不利」という単純な話ではありません。50個作れば単価は下がりますが、売れ残れば在庫がそのまま損失になります。個人の頒布規模では、単価の安さより「確実にはける数」を基準に決めたほうが、総額として損をしにくくなります。

自家複製という選択肢

自分でシリコン型を作り、レジンを流す方法もあります。費用構成は業者委託とまったく違います。

初期に必要なもの。 シリコン、レジン、離型剤、計量器、混合用の容器。真空脱泡器や圧力鍋があれば気泡を大幅に減らせますが、そこまで揃えると数万円から十数万円の設備投資になります。

継続してかかるもの。 シリコンとレジンの材料費。シリコンは型の大きさに比例して消費し、しかも使うたびに劣化して寿命があります。

目に見えにくいもの。 作業時間と、失敗した回数ぶんの材料。最初の数回は型が割れる、気泡が入る、離型できないといった失敗が出ます。

自家複製と業者委託の性格を並べると次のようになります。

観点自家複製業者委託
初期費用設備と材料で数万円〜型代として十数万円〜
少部数の単価材料費のみで抑えられる型代が乗るため高くなる
品質の安定経験に依存し、ばらつきが出やすい一定水準で揃いやすい
所要時間自分の手を動かす時間が全部かかる待ち時間は長いが自分は他の作業ができる
向いているケース数個〜十数個・試作・自分用数十個・イベント頒布・品質を揃えたい

「安く済ませたいから自家複製」と単純には言えません。自分の作業時間を計算に入れると、数十個の規模では業者に出したほうが安いことがあります。逆に、5個や10個なら自家複製のほうが総額を抑えられます。

依頼から受け取りまでの流れ

業者に委託する場合の流れを、目安期間つきで整理します。前掲の実例では見積もり連絡から納品まで約2ヶ月かかっているので、それを分解した形です。

  1. 原型を仕上げる(自分の作業次第)。表面処理まで終わらせます。ここが残っていると、傷ごと複製されます。
  2. 候補の工房に問い合わせる(1〜3日)。写真を添えて、全高・パーツ数・希望部数・希望納期を伝えます。返信の速さも判断材料になります。
  3. 見積もりを受け取って発注する(3日〜1週間)。複数から取っている場合は、含まれる範囲を揃えて比べます。
  4. 原型を送り、分割と型の設計を待つ(2〜3週間)。ここで分割の相談が入ることがあります。修正が必要なら、この段階で判明します。
  5. テストショットを確認する(数日)。1体だけ抜いたものを見て、気泡やパーツの欠けを確認します。問題があれば型の段階で直せる最後の機会です。
  6. 量産と納品を待つ(2〜4週間)。部数が多いほど時間がかかります。
  7. 検品する(1〜2日)。全数を開けて、欠け・気泡・パーツの過不足を確認します。不良品の扱いは発注時に確認しておいた条件に従います。

イベントに合わせる場合、この全体に加えて原型の修正期間が要ります。締切日から逆算するのではなく、原型完成日から積み上げて「間に合う日程か」を確かめてください。

見積もりを取るときに伝えること

複製代行の見積もりは、原型を見ないと確定しません。それでも、次の情報を先に伝えておくと初回のやり取りで概算が返ってきます。

  • 全高とパーツ数。同じ全高でも、パーツが多いほど型の数が増え、費用は上がります。
  • 希望部数。型代を何体で割るかが単価を決めるため、部数の前提がないと単価は出せません。
  • 納品希望日。イベントに合わせるのか、期限がないのか。特急扱いになると費用が変わることがあります。
  • 原型の状態。手作業の造形物か、3Dプリント出力か。表面処理をどこまで済ませてあるか。
  • 分割の希望。自分で分割済みか、分割から任せたいか。任せる場合はその作業ぶんが加算されます。

見積もりを比べるときは、総額だけでなく「テストショットが含まれるか」「不良品が出たときの扱い」も揃えて確認してください。テストショットは、量産に入る前に1体だけ抜いて確認する工程で、ここで気泡やパーツの欠けが見つかれば型の段階で修正できます。

複製に出す前に原型側で潰しておくこと

型を作った後の修正は、ほぼ作り直しと同じ費用がかかります。原型の段階で潰しておきたい点を挙げます。

アンダーカットを残さない。 型から引き抜けない形状があると、型を割る面が増えるか、そもそも複製できません。腕の内側、髪の重なり、衣装のひだの奥は要注意です。

細すぎるパーツを見直す。 髪の毛先、指、細いベルトや武器の先端は、樹脂が回り切らずに欠けます。太らせるか、別パーツにして素材を変える判断が要ります。

気泡が溜まりそうな凹みを確認する。 深くて狭い凹部は空気が抜けにくく、抜くたびに気泡が入ります。空気穴を追加できる形かどうかを、複製を頼む相手と相談しておきます。

表面処理を先に終える。 型に写るのは原型の表面そのものです。傷やヤスリ目が残っていれば、その状態で全部数に複製されます。

このチェックを自分でやりきる自信がなければ、分割から相談できる工房を選ぶのが確実です。費用は上がりますが、型の作り直しに比べれば安く済みます。

イベント頒布の現実

作った複製品をイベントで頒布する場合、既存キャラクターを題材にしているなら版権の扱いが関わります。ワンダーフェスティバルの当日版権システムは、実行委員会が版権元の窓口となり、イベント当日・会場限定での販売を個人に許諾する仕組みです。公式サイトでも、許諾を得た作品は「会場限定かつ開催当日限定での販売」となり、オンラインでの購入はできないと案内されています(出典: ワンダーフェスティバル2026[夏] よくあるご質問、2026年7月時点)。

つまり、既存キャラクターのキットは「イベント当日に売り切る」前提で部数を決める必要があります。売れ残りを後日オンラインで捌く、という選択肢が制度上ありません。この制約は部数の判断に直結します。

オリジナルキャラクターの場合は当日版権の対象外で、出展者の判断で扱えます。自分の創作物であれば、通販に回すことも継続販売することもできるため、部数の設計はずっと自由になります。初めて複製に踏み込むなら、オリジナル作品から始めるほうが、在庫の逃げ道がある分だけリスクが小さいと言えます。

原型をデジタルで作る場合

近年は原型をデジタルで作り、3Dプリンタで出力したものを複製にかける進め方も一般的になりました。この場合、複製工程そのものは変わりませんが、原型を作る前段の試行錯誤のコストが大きく下がります。

デジタル原型の利点は、複製に入る前に形を何度でも直せることです。ただし、型から抜けるかどうか(アンダーカットの有無)、パーツ分割をどうするかは、デジタルであっても人が設計する領域です。ここを詰めずに複製へ持ち込むと、型の作り直しという最も高い失敗をすることになります。

その手前、「立体としてのプロポーションをどうするか」を決める段階では、AIによる試作が使えます。Figmeeでは、イラストやラフからフィギュア風画像と3Dモデルを生成し、ブラウザ上で360°回して確認できます。彫り始める前に立体の当たりを取っておく使い方はソフビ原型をAIで試作する方法で詳しく整理しています。生成されるのは形の案であって、複製に回せる製造用データではありません。抜き・肉厚・分割の設計は、この後に人の手で詰める工程です。

価格を決めるときの考え方

複製費用が確定したら、次は頒布価格です。ここで単純に「原価×2」と決めると、思わぬところで赤字になります。

計算に入れ忘れやすいのは、複製費用以外の支出です。パッケージ(箱・袋・緩衝材)、組立説明書の印刷、イベント参加費、搬入出の交通費と送料、そして通販に回すなら梱包資材と発送の手間賃。これらを合算すると、複製単価に対して数百円から千円単位の上乗せになります。

さらに、全部数が売れる前提で価格を決めないほうが安全です。25個作って15個売れる想定なら、15個で回収できる価格に設定しておく。残った10個は次の機会に回せますが、赤字は回収できません。

一方で、既存キャラクターのキットを当日版権で頒布する場合、売れ残りを後日販売する道が制度上ありません。この場合はさらに保守的に、確実にはける部数まで絞って、そのうえで回収できる価格を設定することになります。部数を絞れば型代の負担は重くなりますが、在庫を抱えるよりは読みやすい損失です。

よくある質問

Q. 複製費用の中で一番大きいのは何ですか。 A. 型を作る費用です。部数に関係なく最初に一度かかるため、少部数ほど1体あたりの負担が重くなります。逆に、同じ型で追加生産する場合は型代がかからないため、単価は大きく下がります。

Q. 何個から業者に頼むほうが得ですか。 A. 一概には言えませんが、数十個の規模になると業者委託のほうが総額でも品質でも有利になりやすいところです。数個〜十数個であれば自家複製のほうが安く収まります。自分の作業時間をいくらと見積もるかで、分かれ目は前後します。

Q. 複製の納期はどれくらい見ておけばいいですか。 A. 上記の実例では、見積もりから納品まで約2ヶ月でした。イベントに合わせるなら、この期間に加えて原型の完成・修正の余裕を持たせ、少なくとも3ヶ月前には動き出すのが安全です。

Q. シリコン型は何回くらい使えますか。 A. 型は使うほど劣化し、細部から傷んでいきます。何回抜けるかは形状・サイズ・樹脂の種類で大きく変わるため、追加生産を予定しているなら、依頼先に「同じ型で何体まで見込めるか」を最初に確認しておいてください。型の寿命を超えると作り直しになり、費用は初回とほぼ同じになります。

Q. 3Dプリント出力をそのまま売るのと、複製するのはどちらが安いですか。 A. 部数によります。数個なら出力をそのまま販売するほうが早く安く済み、数十個になると1個ずつ出力する時間と材料費が積み上がるため、型を取ったほうが有利になります。出力機を持っているかどうかでも判断は変わります。

まとめ

ガレージキットの複製費用は、型代という固定費と、1体あたりの変動費の合成で決まります。この構造さえ理解しておけば、見積もりを見たときに「高い・安い」ではなく「自分の部数で何円になるか」で判断できます。

そして、複製は後戻りが最も高くつく工程です。型を切ってからプロポーションを直したくなっても、もう気軽には戻れません。だからこそ、原型に入る前の段階でどれだけ迷いを潰しておけるかが、総費用を左右します。

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