自分のゲームのキャラクターについて、プレイヤーから「グッズが欲しい」と言われる瞬間があります。うれしい反面、何から手をつければいいのか分からず止まってしまう人は少なくありません。グッズ制作について調べても、出てくる情報の多くは企業向けで、数百個単位の発注を前提にしています。個人や数人のチームには、その前提が合いません。この記事では、在庫を抱えず、最小の初期費用で着手できる順番に絞って、立体グッズまでの道筋を整理します。
※現在のFigmeeは、アップロードした絵やイラストから、フィギュア風画像と3Dモデルデータ(GLB / 3MF)を生成・ダウンロードできるサービスです。実物の3Dプリント品の販売は準備中(Coming Soon)です。
最初に決めるのは「何を作るか」ではなく「どう売るか」
多くの人がアイテムの種類から考え始めますが、順番としては販売方法を先に決めるほうが安全です。理由は単純で、販売方法によって必要な初期費用と在庫リスクが桁違いに変わるからです。
個人開発者が取りうる販売方法は、おおまかに3つあります。
| 販売方法 | 初期費用 | 在庫リスク | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 受注生産(オンデマンド) | 小さい | ほぼなし | 需要が読めない初回・ファン数が不明 |
| 少量まとめ発注 → 通販 | 中 | あり(売れ残り) | ある程度の需要が見えている |
| イベント物販 | 中〜大 | あり(+出展費) | コミュニティとの接点を作りたい |
最初の1回は受注生産から始めるのが現実的です。たとえばpixivFACTORYとBOOTHを連携させた「BOOTHオンデマンド販売」は、入稿データを登録しておくと注文が入るたびに1点から製造され、購入者へ直接発送される仕組みです。ショップ運営者が事前に在庫を持つ必要がなく、出品自体に費用はかかりません(出典: pixivFACTORY「BOOTHオンデマンド販売とは?」、pixivFACTORYヘルプセンター、いずれも2026年7月時点)。
この段階で「どれくらい売れるか」を予測する必要はありません。受注生産なら、売れなかったときの損失が実質的に発生しないからです。まず1点でも注文が入るかどうかを確かめる、という目的に集中してください。
ステップ1:平面グッズで需要を測る
立体から入りたい気持ちは分かりますが、順番としては平面グッズが先です。アクリルスタンド、缶バッジ、ステッカーといったアイテムは、入稿データが2Dのイラストで済むため、追加の制作コストがほぼかかりません。すでに持っているキャラクターイラストがそのまま使えるのが最大の利点です。
ここで見るべきは売上そのものではなく、どのキャラクターに反応が集まるかです。ゲーム内で人気だと思っていたキャラと、グッズとして選ばれるキャラが一致しないことは珍しくありません。この情報は、次のステップで立体化するキャラを1体に絞るときの判断材料になります。平面グッズと立体化の違いは自分のイラストを立体グッズにする方法で比較しています。
ステップ2:ゲーム内の3Dアセットは、そのままグッズに使えない
ここが個人開発者にとって最も見落とされやすい壁です。3Dゲームを作っている人ほど、「ゲーム内のモデルデータがあるのだから、それを出力すればいい」と考えます。しかし実際には、リアルタイム表示用に作られたモデルと、立体物として出力するモデルは設計思想が違います。
具体的には次のような差があります。
- 面の枚数を意図的に減らしてある。ゲームは1秒間に何十回も描画するため、動作を軽く保つ目的で面の枚数を抑えます。その状態で拡大すると、曲面の角ばりが目立ちます(ポリゴン数とは?)。
- 凹凸を「絵」で表現している。実際には平らな面に、陰影を描いた画像を貼って凹凸に見せる手法が一般的です(テクスチャとは)。この凹凸は光の当たり方で成立しているため、立体として出力しても形状には現れません。
- 見えない部分が作られていない。カメラに映らない裏側や、他のパーツに隠れる箇所は、そもそも面が存在しないことがあります。
- パーツが分離している。武器・髪・体が別々のオブジェクトとして重なっているだけで、1つの閉じた立体になっていないケースがあります。
ローポリとハイポリの使い分けについてはローポリとハイポリの違いで詳しく整理しています。要するに、ゲーム用アセットは立体化の出発点にはなるが、そのままでは出力データにならないと考えてください。
そして2Dゲームを作っている場合は、そもそも3Dデータが存在しません。この場合は次のステップから始めることになります。
ステップ3:立体データを用意する3つの手段
立体グッズに進むなら、出力できる3Dデータが必要です。手段は3つあり、費用と関与度が大きく異なります。
① 自分でモデリングする Blenderのような無料ソフトを使えば、ソフト代はかかりません。ただしキャラクターモデリングは3Dの中でも難易度が高く、開発と並行して習得するのは負担が大きい選択です。
② 外注する 3Dモデリングの外注費用は、人型キャラクターで5万〜100万円程度が相場とされています。依頼先別では、制作企業が50万〜数百万円、個人クリエイターが10万〜100万円、クラウドソーシングが5万〜30万円という整理が示されています(出典: クラウドソーシングTimes「3Dモデリング費用の相場」、2025年6月2日更新)。品質は最も安定しますが、インディー開発の予算では、グッズ1種類のために出せる金額を超えることが多い水準です。
③ AIでイラストから3Dモデルを生成する イラスト1枚から3Dモデルデータを作る方法です。Figmeeはこの方式で、ブラウザに絵をアップロードするとフィギュア風画像と3Dモデルデータ(GLB / 3MF)を生成し、ダウンロードできます。料金は、フィギュア風画像の生成が登録特典で最初の5回まで無料(登録から3ヶ月有効)、その後は550円で5トークン、3Dモデルの生成が5トークン(1モデルあたり550円相当・GLBと3MFのダウンロード込み)です。
③には正直な限界もあります。生成された形は元の絵の解釈で決まるため、細部を意図どおりに1mm単位で調整することはできません。骨も入っていないため、ポーズを変える用途にも向きません。「まず立体になった姿を確認する」段階に適した手段であり、最終的な製品原型の品質が必要なら②に進む、という使い分けが実態に合います。費用の全体像はオリジナルフィギュアの料金相場で方法別に比較しています。
ステップ4:実物にする工程は外部サービスに任せる
3Dデータが用意できたら、実物化は3Dプリントの出力サービスへデータを入稿する形が一般的です。多くのサービスは素材とサイズから見積もりを出す方式のため、正確な金額は各サービスの見積もりツールで確認してください。入稿前に確認すべきデータ側の条件(最小肉厚など)はイラストから3Dプリント用データを作るガイドにまとめています。
なお、Figmee自身による実物の3Dプリント品の販売は準備中(Coming Soon)で、現時点では提供していません。生成したデータを外部サービスへ持ち込む流れになります。1体だけ作る場合のルート比較はフィギュアを1個から作る方法を参照してください。
ステップ5:立体データは、実物にしなくても使い道がある
見落とされがちですが、3Dデータは実物化しなくても開発とプロモーションの資産になります。
- ストアページ・トレーラーの素材として、キャラクターを360°回して見せる映像を作れる
- SNS投稿のネタとして、制作過程そのものを発信できる(2Dのキャラが立体になっていく過程は、開発日誌として反応を得やすい題材です)
- クラウドファンディングのリターン案を検討する際、実際の形を見ながら判断できる
- ファンアートの参考資料として、キャラクターの立体的な情報を共有できる
つまり、立体データを作った時点で回収できる価値があります。実物グッズの製造判断は、その後で構いません。順番として、データ化 → 反応を見る → 製造判断とすると、リスクの取り方が段階的になります。
なお、グッズ化すれば売上が伸びるとは限りません。反応が想定より小さいこともあります。だからこそ、初期費用と在庫リスクを抑えた順番で進める意味があります。
権利の確認を忘れずに
自社で一から作ったオリジナルキャラクターであれば、立体化もグッズ化も原則として自由です。ただし、次のケースでは事前確認が必要です。
- キャラクターデザインを外部のイラストレーターに依頼した場合、代金の支払いだけでは著作権が描いた本人に残るのが原則です。立体化・商用利用を含む契約になっているかを確認してください。
- アセットストアで購入した3Dモデルやテクスチャを使っている場合、その利用規約でグッズ化(改変・再配布)が認められているかを確認してください。ゲーム内での利用は許諾されていても、物理グッズは対象外というライセンスがあります。
- コラボ企画のキャラクターは、相手方との取り決めの範囲を確認してください。
契約と権利の整理は創作キャラのフィギュアは売っていい?で、ケース別にまとめています。
予算別の進め方
初期費用の目安ごとに、現実的な選択肢を並べます。
| 使える初期費用 | 現実的な進め方 |
|---|---|
| ほぼゼロ | 受注生産で平面グッズを出品。反応を見る |
| 数千円〜1万円台 | 平面グッズに加え、AI生成で立体データを1体作り、映像・SNS素材として活用 |
| 数万円〜 | 立体データを外部プリントで1体だけ出力し、実物の仕上がりを検証 |
| 数十万円〜 | キャラクター1体のモデリングを外注し、製品原型の品質を確保 |
上から順に進めるのが、失敗コストが小さい順番です。いきなり最下段から入ると、需要が読めないまま最も大きい支出をすることになります。
よくある質問
ゲーム内の3Dモデルを3Dプリントに出せますか?
そのままでは難しいことが多いです。リアルタイム表示用のモデルは面の枚数が抑えられ、凹凸をテクスチャで表現し、見えない部分の面が省略されていることがあるためです。出力するには、面を閉じる・厚みを持たせるといった調整が必要になります。調整の見通しが立たない場合は、立体化用に別のデータを用意するほうが早いこともあります。
2Dゲームでも立体グッズは作れますか?
作れます。3Dデータがない状態からのスタートになるため、ステップ3(自分でモデリング・外注・AI生成)のいずれかで立体データを用意することになります。キャラクターの正面がはっきり分かるイラストが1枚あれば、どの手段でも出発点になります。
最初に作るなら、どのキャラクターを選ぶべきですか?
平面グッズでの反応が良かったキャラクター、かつ形がシンプルなキャラクターを選んでください。細い触角、透ける髪、複雑に絡み合ったアクセサリーといった要素は、立体化でも実物化でも難易度が上がります。1体目は検証と割り切って、条件のよいキャラクターを選ぶのが合理的です。
イベント出展と通販、どちらを先にすべきですか?
在庫リスクの観点では通販(受注生産)が先です。イベントは出展費と当日の在庫が先行するため、需要が読めない段階では負担が大きくなります。ただし、コミュニティとの直接の接点を作ることが目的なら、イベントを先にする判断もあります。目的で選んでください。
グッズ化にあたって、ゲームのリリース前と後のどちらが良いですか?
一律の正解はありません。リリース前はキャラクターの認知が低い一方、開発の様子を発信する材料としては効果的です。リリース後は反応の予測がしやすくなります。どちらの場合も、在庫を持たない方法から始めれば判断を後ろ倒しにできます。
まとめ
インディーゲームのキャラクターをグッズ化するとき、いちばん重要なのは順番です。販売方法を先に決めて在庫リスクを消し、平面グッズで反応を測り、それから立体に進む。この順番なら、需要が読めない段階で大きな支出をせずに済みます。
そして立体に進むときは、ゲーム内のアセットがそのままは使えないという前提を最初に押さえてください。立体化用のデータを別に用意する必要があり、その手段は自作・外注・AI生成の3つ。予算と目的に応じて選び、まずは1体だけ試すところから始めるのが現実的です。




