Live2Dのモデルは持っている。配信でも動かしている。でも、そのキャラクターをグッズとして形にしようとした瞬間に、情報が急に見つからなくなる。モデルの作り方を解説したチュートリアルは大量にあるのに、その先の「グッズにするには何から手をつけるのか」を書いたものがほとんどない、という断絶があります。
この記事では、まずLive2Dのデータがどういう性質のものかを正確に整理し、そのうえでグッズ化の選択肢を平面・擬似立体・3Dデータ・実物立体の4ルートに分けて比べます。それぞれの限界も隠さずに書きます。
この記事でわかること
- Live2Dのデータから3Dモデルを直接書き出せない理由
- 「Euclid」という製品が現在どうなっているか
- 平面・擬似立体・3Dデータ・実物という4つの選択肢と、それぞれの制約
- アクリルスタンドを作る場合に押さえておく入稿の基本仕様
※現在のFigmeeは、アップロードした絵やイラストからフィギュア風画像と3Dモデルデータ(GLB / 3MF)を生成・ダウンロードできるサービスです。実物の3Dプリント品の販売は準備中(Coming Soon)です。
まず前提:Live2Dのデータは立体データではない
グッズ化でつまずく最大の理由がここにあります。
Live2D Cubismは、1枚のイラストをパーツに分割し、変形させることで「立体的に動いているように見せる」技術です。公式の説明でも、Live2Dは元の絵の魅力を保ったまま描かれたイラストをそのまま動かす技術であり、似た見た目の3D表現を作り直すものではないと位置づけられています(出典: Live2D Cubism Editor 公式ページ、2026年7月時点)。
つまり、手元のLive2Dモデルの中には三次元の形状データが入っていません。入っているのは、イラストのパーツと、それをどう変形させるかの情報です。だからこそ元絵のタッチがそのまま残るという大きな長所があるのですが、同時に「3Dモデルとして書き出す」ことは仕組み上できません。
この性質は、モデルを動かせる範囲にも表れます。従来のLive2Dの技術は向きの変化が30〜40度程度に制限されていたと報じられており、真横や背面まで回すことは想定されていません(出典: ITmedia NEWS「イラストを原画そのまま360度立体的に『Live2D Euclid』」、2014年12月)。配信で見えている「立体的な動き」は、あくまで正面付近での変形によるものです。
この点を理解しておくと、グッズ化の相談で何を頼めるのか・頼めないのかがはっきりします。3Dモデルとは何かという基礎は3Dモデルとはで説明しています。
かつてあった「Euclid」という答えと、その現在
Live2Dの周辺を調べていると「Euclid(ユークリッド)」という名前に行き当たることがあります。これは2Dイラストのまま全方位の表現を目指した製品で、顔は2Dのまま体は3Dといった構成も可能とされていました。
ただし現在は入手できません。Live2D社は2018年10月16日にEuclidの販売・公開停止を発表しています。理由は、Euclidが目指す表現を本格的に普及するレベルへ発展させるには再度大きな仕様変更が必要と判断し、開発・サポートの資源をCubismへ集中させることを選んだためと説明されています。ユーザー向けのサポートは2019年4月16日まで継続され、Cubismへの移行割引が案内されました(出典: 株式会社Live2D「Live2D Euclidの販売・公開停止について」)。
古い記事や紹介ページにはEuclidの情報が残っていることがあるため、「これを使えば立体化できるのでは」と期待して調べ始めると時間を無駄にします。現在のLive2Dの主軸はCubismであり、Euclidのノウハウはそちらに反映されている、というのが正確な現状です。
グッズ化の4ルートを比べる
Live2Dモデルを持っている状態から進める道は、大きく4つに分かれます。
| ルート | 何ができるか | 元データ | 主な制約 |
|---|---|---|---|
| ① 平面グッズ | アクリルスタンド、缶バッジ、ステッカー等 | 元のイラスト(PSD等) | 立体表現はできない |
| ② 擬似立体の画像 | フィギュア風の見た目の画像 | 元のイラスト | 画像であり立体データではない |
| ③ 3Dモデルデータ | GLB / 3MF等の立体データ | 元のイラスト | Live2Dの動きは引き継がれない |
| ④ 実物の立体 | 3Dプリント出力、ガレージキット等 | ③のデータまたは原型 | 別途の造形設計・外部発注が必要 |
重要なのは、どのルートも出発点が「Live2Dモデル」ではなく「元のイラスト」になるという点です。Live2Dのリグや変形の情報は、グッズ化の工程では基本的に使えません。使うのは、そのモデルの素材になった一枚絵、あるいはそのために描き起こした新規の絵です。
これは残念なことのようですが、逆に言えばLive2Dモデルを持っていなくても同じことができるということでもあります。イラストさえあれば、グッズ化の入口には立てます。
①平面グッズ:最も現実的で、情報も揃っている
VTuberのグッズとして最も一般的なのがこのルートです。アクリルスタンドは特に定番で、同人グッズを扱う印刷所の多くが個人向けに少部数から受けています。
入稿データの基本仕様は各社おおむね共通しています。解像度は実寸で350dpi程度が推奨され、透明なアクリルにそのまま印刷すると色が透けてしまうため、デザインの下に白インクを敷く「白版」を別レイヤーで用意します。またカット位置には1mm程度のズレが生じるため、カットラインはイラストから2mm以上離して作成するのが一般的な指針です(出典: 同人グッズ.jp「アクリルグッズの入稿データの作り方」、2026年7月時点)。
このルートの良いところは、情報も業者も選択肢も豊富で、迷いにくいことです。一方で当然ながら、平面である以上、見る角度を変える体験は作れません。
平面グッズ向けに絵を用意するときは、Live2D用に描いたPSDがそのまま使えないことがある点に注意してください。Live2D用の素材は、目や口、髪の房などをパーツごとに分割し、隠れる部分まで描き足してある状態です。グッズ用にはこれを1枚に統合し、パーツの重なりを整理し直す作業が発生します。分割の都合で不自然に見える継ぎ目が出ることもあるため、時間に余裕があるならグッズ用の一枚絵を別途仕上げたほうが仕上がりは安定します。
②③立体方向のルート:AIで3Dデータを作る
「同じキャラクターを、平面ではない形で見せたい」という段階に来たとき、選択肢になるのがイラストからの3Dモデル生成です。
Figmeeはこのルートを扱うサービスで、アップロードしたイラストからフィギュア風の画像を生成し、そこから3Dモデルを作ってブラウザ上で360°回して確認できます。GLB / 3MFとしてダウンロードでき、360°回転する動画としても書き出せます。配信の告知やグッズ受注前の反応うかがいに、平面の立ち絵ではない見せ方を用意したいときに使える形です。
技術的にどう立体を推定しているのかは画像から3Dモデルを作るAIの仕組みで解説しています。
ただし限界も明確です。Live2Dで作り込んだ表情差分や動きは一切引き継がれません。 生成されるのは1枚の絵から推定された静止した立体であり、まばたきも口パクもありません。Live2Dが持っている最大の価値である「動き」は、このルートでは再現できないものだと理解しておいてください。
また、絵に描かれていない背面はAIの推定で補われます。後頭部の髪型や背中のデザインにこだわりがある場合は、生成後の確認が必須です。
入力する絵の選び方も結果を左右します。 立ち絵をそのまま入れる場合、正面向きで全身が入っており、腕が体に大きく重なっていないものが安定します。逆に、片手を前に突き出したポーズや、大きなエフェクトが重なった構図は、輪郭の前後関係が読み取りにくく、意図しない形になりやすい傾向があります。配信用のメイン立ち絵が凝った構図なら、立体検討用に素立ちの一枚を用意し直すほうが結果的に近道です。
なお、複数のツールを比較検討したい場合は画像から3DモデルをつくるAIツール比較に、イラストの再現度という観点での違いをまとめています。
④実物の立体:外部の工程が必要になる
3Dデータができたあと、実物として出力する段階は別の工程です。外部の3Dプリント出力サービスへデータを持ち込む形が一般的で、ガレージキットとして少部数を扱う道もあります。
ここで押さえておきたいのは、データが作れることと出力できることは別問題という点です。細い髪の毛先やアクセサリーは、造形の最小寸法を下回ると出力時に破損します。素材選びと厚みの考え方はイラストを3Dプリントするには?にまとめました。
なおFigmeeからの実物出力の提供は準備中(Coming Soon)で、現時点で提供しているのはデジタルデータまでです。
進める順番の目安
迷ったときの順番として、次の流れが無理がありません。
- 元のイラストを整える。グッズ化に使う一枚を決める、あるいは描き起こす。全身が入り、腕が体に重なりすぎていない絵が扱いやすくなります。
- 平面グッズから始める。情報が揃っていて失敗しにくく、受注の反応も測れます。
- 立体の見せ方を試す。3Dモデルを生成して回転動画を作り、反応を見てから実物の検討に進みます。
- 実物を検討する。出力サービスの見積もりを取り、造形上の制約を確認します。
順番を飛ばして最初から実物を目指すと、造形設計と発注の両方を同時に学ぶことになり負荷が高くなります。3の段階で「動かす」方向と「立体にする」方向のどちらを先に試すか迷うなら、イラストを動かす・立体にする4つの方法で、GIF・Live2D・3D化・AI動画それぞれの準備するものと所要時間の目安を横に並べています。
受注のタイミングも考えておく価値があります。 VTuberの活動では、記念日や周年、大きな配信企画に合わせてグッズを出すことが多くなります。平面グッズは入稿から納品までの期間が読みやすい一方、立体は造形の修正が入ると読みにくくなります。日程が決まっている企画に立体を絡めるなら、データの完成を早めに置き、出力の見積もりは余裕を持って取るのが安全です。
よくある質問
Live2DのモデルファイルをそのままGLBに変換できますか
できません。Live2Dのデータには三次元の形状情報が含まれていないためです。立体データが必要な場合は、元のイラストから3Dモデルを新規に作る(またはAIで生成する)ことになります。
Euclidは今から使えますか
使えません。2018年10月16日に販売・公開が停止され、サポートも2019年4月16日で終了しています。現在Live2D社が提供しているのはCubismです。
生成した3Dモデルを配信で動かせますか
Figmeeが生成するのは静止した3Dモデルで、ボーン(骨組み)が入っていないためそのままでは動かせません。動かすには別途リギングが必要です。リギングについてはリギングとはで解説しています。配信用のモデルとしては、Live2Dや3D用のモデルを目的に合わせて制作するのが本筋です。
二次創作のキャラクターでもグッズにできますか
権利者のガイドラインに従う必要があり、キャラクターごとに条件が異なります。自作のオリジナルキャラクターであれば自由度は高くなります。グッズ化にあたっての権利の考え方は創作キャラのフィギュアは売っていい?で整理しています。
事務所や制作者にモデルの権利がある場合はどうなりますか
Live2Dモデルの著作権が誰にあるかは、制作時の契約によります。イラストの著作権とモデリングの著作権が別の人に帰属していることもあり、グッズ化にあたって両方の許諾が必要になる場合があります。外注して作ってもらったモデルなら、契約書や納品時のやり取りを確認し、不明なら制作者へ直接尋ねるのが確実です。
まとめ
Live2Dのグッズ化でつまずくのは、情報が足りないからではなく、Live2Dのデータが立体データではないという前提が共有されていないからです。出発点はLive2Dモデルではなく元のイラストになる、と分かった時点で、話は「イラストからのグッズ化」という情報が豊富な領域に着地します。
平面グッズは選択肢も情報も揃っています。そのうえで、動きとは別の見せ方として立体を試したいなら、イラストからの3Dモデル生成という道があります。Live2Dの動きは引き継げないという限界を理解したうえで、用途を分けて使うのが現実的です。




