Live2Dモデルを3D化できないのは、変換元になる立体の情報がデータの中にそもそも入っていないからです。Live2Dはイラストを分割したパーツを平面上で変形させて立体的に「見せる」方式で、奥行きを持つ形状データを保持していません。
つまりこれは「良い変換ツールが見つかっていない」という問題ではなく、「変換の材料が存在しない」という構造の話です。この記事では、なぜそうなるのかをデータの成り立ちから説明し、そのうえで実際に立体を用意したいときに何ができるのかを整理します。
※現在のFigmeeは、アップロードした絵やイラストからフィギュア風画像と3Dモデルデータ(GLB / 3MF)を生成・ダウンロードできるサービスです。実物の3Dプリント品の販売は準備中(Coming Soon)です。
Live2Dのデータには何が入っているのか
Live2D Cubism Editorは、公式マニュアルで「イラストから立体的な表現を生み出す2Dモデリングツール」と説明されています。PSDなどのイラストを読み込み、パーツごとにメッシュを設定し、パラメータやデフォーマーで変形させる仕組みで、書き出されるのはMOC3(モデル)やMOTION3(アニメーション)といった形式です(出典: Live2D Cubism Editor Manual、2026年7月時点)。
ここで重要なのは、変形の対象が「イラストの上に張られたメッシュ」であることです。頭を横に向けたときに顔のパーツが動いて見えるのは、立体を回転させているのではなく、絵を引っ張って形を変えているからです。
だから、Live2Dのデータをどれだけ調べても、次の情報は出てきません。
- 頭部の後ろ側がどんな形をしているか
- 髪の毛の束に何ミリの厚みがあるか
- 腕が体からどれだけ離れているか(前後関係の順序はあっても、距離ではない)
3Dモデルはこれらの情報の集合体です。持っていないものは変換できません。「Live2D → 3D」の変換ツールが見つからないのは、技術が追いついていないからではなく、変換という操作が原理的に成立しないためです。
Euclidという3D製品があった
Live2Dの話をするとき、避けて通れないのが「Live2D Euclid」です。これは2017年4月にリリースされた製品で、「3Dのように動く2D表現」を実現するためのEditorとSDKでした。イラストを全方位から見られるようにする、という方向性の技術です。
Euclidは2018年10月16日に販売・公開の停止が発表され、ユーザーサポートは2019年4月16日をもって終了しました。公式のお知らせでは、限られた開発資源をより広く普及段階にあるCubismに集中させる判断であり、EuclidのノウハウはCubismに統合して表現力を拡張していく計画が示されています(出典: 株式会社Live2D「Live2D Euclidの販売・公開停止について」、2026年7月時点)。
ここを混同したまま情報を探すと、話がややこしくなります。検索して出てくる「Live2Dで3D」の記事には、現行のCubismの話とEuclidの話が混ざっていることがあります。現在提供されているCubismは2Dのモデリングツールであり、Euclidは別製品で、すでに提供を終えている——この区別を持っておくと、古い情報に振り回されずに済みます。
「できない」の中身を3つに分ける
「Live2Dを3D化できない」という言葉には、実は違う意味が混ざっています。
| 「できない」の中身 | 実態 | 対処 |
|---|---|---|
| データを変換できない | 立体情報が無いため原理的に不可能 | 変換をあきらめ、別の方法で立体を用意する |
| 同じ見た目にならない | 2Dの誇張表現は立体で成立しないことがある | どこを似せるか優先順位を決める |
| 立体にする手段が分からない | 手段はある。何を使うか知られていないだけ | 原画から3Dを新規に作る |
1つめは変えようがありません。2つめは、Live2Dに限らずイラスト全般に起きることです。正面から見たときに最も美しく見えるよう調整された絵は、横から見たときの整合性を犠牲にしていることがあります。この構造はイラストが3D化できないと言われる理由で詳しく扱っています。
3つめだけが、実際に動かせる部分です。
なお、2つめについて補足しておくと、これは絵が下手だという話ではまったくありません。むしろ逆で、平面の魅力を最大化するために積み重ねられた工夫ほど、立体との相性が悪くなります。目を大きく描く、髪を実際より軽く見せる、輪郭を意図的に単純化する——どれも2Dでは有効な判断ですが、立体はそれらの嘘を全方向で成立させることができません。「立体にすると印象が変わる」のは、変換の失敗ではなく媒体の違いだと捉えるほうが、判断を誤らずに済みます。
立体を用意する3つの方法
Live2Dのデータからの変換をあきらめたとして、では何ができるのか。方法は3つあります。
| 方法 | 元にするもの | 期間の目安 | 費用の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| モデラーに依頼する | 原画・設定資料 | 数週間〜数ヶ月 | 数万円〜数十万円 | 品質を作り込みたい/用途が確定している |
| 自分でモデリングする | 原画・設定資料 | 学習を含めて数ヶ月 | ソフト代(無料の選択肢あり) | 継続的に作る予定がある |
| AIで生成する | イラスト1枚 | 数分〜数十分 | サービスによる | まず立体になった姿を見たい/試作段階 |
どれも共通しているのは、Live2Dのデータではなく、その元になったイラストや設定資料を材料にするという点です。Live2Dモデルを作った時点で手元にあるはずのPSDや原画が、そのまま次の工程の入力になります。
原画から3Dを起こす手順
3つめのAI生成を選んだ場合の流れを、目安時間つきで整理します。
- 入力に使う1枚を選ぶ(10分)。全身が入っていて、手足が胴体と重なりすぎていない絵が扱いやすくなります。Live2D用に分割したパーツを組み直して、素立ちに近い1枚を書き出すのが確実です。
- 背景を外して主体だけにする(10分)。背景の描き込みは輪郭の判定を邪魔します。白背景に主体だけが乗っている状態が最も安定します。
- フィギュア風画像を生成する(数分)。ここで「立体になったらどう見えるか」の解釈が入ります。意図と違う方向に転んだら、この段階でやり直すのが最も安上がりです。
- 3Dモデルを生成して回す(数分)。背面・真横・あおり・俯瞰の4方向を確認します。絵に描かれていなかった後頭部や背中がどう補完されたかを見る工程です。
- 書き出して次の工程へ渡す(10分)。GLBや3MFで書き出し、編集ソフトや出力サービスに持ち込みます。
Figmeeでもこの流れで、イラストからフィギュア風画像と3Dモデルを生成し、ブラウザ上で360°回して確認できます。生成されるのは形の案であって、そのまま配信やゲームで動かせる完成データではありません。動かすためにはリギングなどの工程が別途必要になります。
用途によって必要な工程が変わる
「3Dにしたい」と言っても、その先の使い道で必要な工程はまったく違います。ここを最初に決めておかないと、余計な費用を払うか、逆に足りない状態のデータを受け取ることになります。
静止画として見せたい場合。 形とテクスチャがあれば足ります。生成した3Dモデルを回して好きな角度でレンダリングすれば、それだけで新しい絵柄の素材になります。追加の工程はほとんど要りません。
回転する映像を作りたい場合。 これも形とテクスチャで足ります。カメラを回すだけなので、モデル自体を動かす必要がありません。SNSに投稿する短い動画なら、この段階で完結します。
配信で動かしたい場合。 骨を入れて動くようにする工程(リギング)と、表情を制御する仕組みが必要です。ここから先は3Dモデル制作というより、キャラクターセットアップの領域に入ります。工程の全体像はリギングとは?3Dモデルが動く仕組みで解説しています。
グッズや出力に使いたい場合。 見た目が整っていることに加えて、形が物理的に成立しているかが問われます。細すぎる突起、閉じていない面、極端に薄い部分は、出力の段階で問題になります。
依頼する場合も自分で作る場合も、この4つのどれを目指すのかを先に言葉にしておいてください。多くの場合、最初に欲しかったのは1つめか2つめで、そこまでなら想像より短い期間でたどり着けます。
材料として用意しておくもの
Live2Dモデルを作った時点で、次の工程に使える資料はすでに手元にあるはずです。棚卸ししておきましょう。
- 分割前の原画(PSD)。パーツに分ける前の1枚絵があれば、それが最良の入力です。
- 各パーツのレイヤー。組み直して別ポーズの1枚を書き出せます。素立ちに近い姿勢が最も扱いやすくなります。
- 設定資料・ラフ。背面や側面の描き込みがあるなら、依頼時の資料として価値が高いものです。
- 色指定。テクスチャを作り込む段階で、意図した色を伝えられます。
逆に、これらが残っておらず、書き出し済みのMOC3しか手元にないと選択肢は狭まります。Live2Dモデルを外注して納品されたきりの場合は、原画データが含まれているかどうかを確認しておいてください。含まれていなければ、制作した方に相談することになります。
期待値をどこに置くか
正直に書いておくと、原画から生成した3Dモデルは、Live2Dモデルと同じ見え方にはなりません。理由は2つです。
Live2Dは「正面から見たときの最適解」を積み上げている。 パラメータごとに手で調整された形は、その角度で最も良く見えるように作られています。立体は全方向で1つの形しか持てないため、どこかで妥協が必要になります。
線の情報が立体では持てない。 2Dの魅力の一部は線そのものにあります。立体になると線は輪郭やテクスチャに置き換わり、印象が変わります。
それでも立体にする価値があるのは、平面ではできないことができるようになるからです。360°回る映像を作る、任意の角度から新しい絵柄を起こす、グッズの前に完成イメージを確認する。Live2Dの代替として見ると物足りませんが、別の表現手段として見ると使いどころははっきりしています。グッズ方向への展開の全体像はLive2Dキャラをグッズにする前に知っておきたい選択肢にまとめています。
よくある質問
Q. Live2DのMOC3ファイルを3Dソフトで開けますか。 A. 開けません。MOC3はCubism用の形式で、3Dソフトが読み込む汎用のメッシュ形式ではありません。3Dソフトに持ち込みたい場合は、元のイラストから3Dモデルを新規に作ることになります。
Q. Euclidはもう使えないのですか。 A. 2018年10月に販売・公開が停止され、ユーザーサポートも2019年4月16日で終了しています。現在提供されているのはCubismで、こちらは2Dのモデリングツールです。
Q. Live2Dのパーツ分割データは3D化に役立ちますか。 A. 立体情報としては使えませんが、資料としては役立ちます。髪の束や衣装の重なりがどう分かれているかが分かるため、モデラーに依頼するときの参考資料として渡す価値はあります。
Q. Live2Dと3D、どちらを先に作るべきですか。 A. 配信を主軸にするならLive2Dが先で問題ありません。ただし、原画を描く段階で背面や側面のラフも一緒に残しておくと、後から立体を作りたくなったときに資料が揃っている状態から始められます。数十分の追加作業で、後の選択肢が広がります。
Q. 生成した3DモデルをVTuberの配信に使えますか。 A. そのままでは使えません。配信で動かすには、骨を入れて動くようにする工程(リギング)や、表情の設定が必要です。生成物は形の出発点であり、そこから先は別の作業になります。
まとめ
Live2Dモデルの3D化ができないのは、データに立体の情報が入っていないからです。変換ツールを探し続けるより、この事実を先に受け入れたほうが早く前に進めます。
進む先は決まっていて、材料は元のイラストです。モデラーに依頼するか、自分で作るか、AIで生成するか。どれを選ぶにせよ、出発点はLive2Dのデータではなく、それを作る前に描いた1枚の絵になります。




