GLB を STL に変換するいちばん確実な方法は、無料の 3DCG ソフト Blender に GLB を読み込み、「ファイル > エクスポート > Stl (.stl)」で書き出す ことです。Blender は glTF 2.0(.glb / .gltf)の読み込みと STL の書き出しの両方に標準対応しているため、追加のソフトを買う必要はありません。ただし、変換の前に必ず知っておくべき事実があります。STL には色とテクスチャの情報が残りません。 変換すると、モデルは単色の形だけになります。
この記事では、変換の具体的な手順、エクスポート設定の意味、無料でできる方法の比較、そして「色を残したい場合の別の選択肢」までを順に解説します。
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なぜ色が消えるのか
原因は、2 つの形式が設計された目的が違うことにあります。
GLB(glTF 2.0) は、Khronos Group(2026年7月時点)が策定した、3D モデルを効率よく配信・表示するための形式です。形状に加えて、ベースカラー・メタリック・ラフネス・アンビエントオクルージョン・ノーマルマップ・エミッシブといったマテリアルの情報とテクスチャ画像を、1 つのファイルに内包できます(出典: Blender Manual - glTF 2.0、2026年7月時点)。
STL は、これに対して三角形の集まりとして立体の表面を記述するだけの形式です。Blender の公式マニュアルは「STL ファイル形式は CAD ソフトウェアとのファイルの受け渡しに便利で、3D プリント用ソフトへの読み込みにもよく使われる」と説明しています(出典: Blender Manual - STL、2026年7月時点)。マテリアルやテクスチャを保持する仕組みが、そもそも規格に含まれていません。
| 項目 | GLB | STL |
|---|---|---|
| 形状 | 保持する | 保持する |
| 色・テクスチャ | 保持する | 保持しない |
| マテリアル(金属感・粗さ等) | 保持する | 保持しない |
| ボーン・アニメーション | 保持できる | 保持しない |
| 主な用途 | Web 表示・ゲームエンジン・受け渡し | CAD・3D プリント |
| ファイル構成 | 1 ファイルに内包 | 1 ファイル(形状のみ) |
つまり色が消えるのは変換の失敗ではなく、STL という形式の仕様どおりの結果 です。形式ごとの性格の違いはOBJ・FBX・STL・GLBの違いで整理しています。
Blenderで変換する手順(所要 5 分)
- Blender をインストールする(初回のみ・5〜10 分)。blender.org から無料で入手できます。すでに入っている場合はこの手順は不要です。
- Blender を起動し、初期の立方体を削除する(20 秒)。中央にある Cube を選択し、
Xキーで消しておくと、読み込んだモデルが見やすくなります。 - 「ファイル > インポート > glTF 2.0 (.glb/.gltf)」で GLB を読み込む(1 分)。glTF 2.0 のアドオンは既定で有効になっているため、追加のインストールは通常不要です。詳しい読み込み手順はGLBをBlenderに読み込む手順にまとめてあります。
- モデルが正しく表示されているか確認する(1 分)。テンキーの
.(選択に注視)でモデルを画面いっぱいに表示できます。この段階では色が付いて見えていて問題ありません。 - 書き出したいオブジェクトを選択する(10 秒)。複数のパーツに分かれている場合、
Aキーで全選択します。 - 「ファイル > エクスポート > Stl (.stl)」を選ぶ(10 秒)。
- エクスポート設定を確認し、保存する(1〜2 分)。設定の意味は次の表のとおりです。
エクスポート設定の意味
Blender 公式マニュアルに記載されている STL エクスポートの主な設定です。
| 設定 | 内容 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| Format: ASCII | バイナリではなくテキスト形式で書き出す | 通常はオフのまま(バイナリのほうがファイルが小さい) |
| Batch | オブジェクトごとに別々の STL として書き出す | パーツ分割して印刷したいときにオン |
| Selection Only | 選択中のオブジェクトだけを書き出す | 一部だけ出したいときにオン |
| Scale | ワールド原点に対する拡大縮小の倍率 | 寸法が合わないときに調整する |
| Scene Unit | シーンの単位設定を書き出しデータに適用する | 実寸で扱いたいときにオン |
| Forward / Up | 前方向・上方向の軸を変換する | 受け取り側のソフトで向きが違うときに使う |
| Apply Modifiers | モディファイアーを計算した後のメッシュを書き出す | 通常はオンのまま |
| Properties(Viewport / Render) | ビューポート用と最終レンダー用のどちらの設定を使うか | サブディビジョンサーフェスを使っている場合に効いてくる |
Forward / Up について、公式マニュアルは「Blender は Y forward、Z up を使う(正面ビューが +Y 方向を向いているため)。たとえば Y を上方向とするアプリケーションは珍しくなく、その場合は -Z forward、Y up を指定する必要がある」と説明しています。書き出したモデルが横倒しになっていたら、まずこの設定を疑ってください。
書き出す前にやっておくと良いこと
手順 5 と 6 の間で、次の 3 つを済ませておくと、あとの手戻りが減ります。
不要なパーツを消す。 GLB の中に、台座・背景の板・使わない小物などが含まれていることがあります。STL にしてから消すのは面倒なので、Blender の段階で削除しておきます。オブジェクトを選択して X キーで消せます。
パーツを分けるか決める。 別々に造形して後で組み立てたい場合は、エクスポート設定の Batch をオンにすると、オブジェクトごとに別ファイルとして書き出されます。1 体をそのまま出したい場合はオフのままです。
スケールの基準を決める。 「高さ何 mm にしたいか」を先に決めておくと、スライサーでの調整が一度で済みます。Blender 上で N キーを押すとサイドバーが開き、選択中のオブジェクトの寸法(Dimensions)を数値で確認・入力できます。
無料でできる方法の比較
STL への変換手段は Blender だけではありません。それぞれに向き・不向きがあります。
| 方法 | 費用 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| Blender で変換 | 無料 | 変換前に形を確認・修正できる。設定を細かく指定できる | インストールが必要。初回は操作を覚える手間がある |
| オンライン変換サービス | 多くが無料(制限あり) | インストール不要。数クリックで済む | ファイルを第三者のサーバーへ預けることになる。サイズ上限・機能制限がある |
| スライサーで直接開く | 無料 | 変換の工程自体が不要になる場合がある | 対応形式はスライサーによる。事前に確認が必要 |
オンライン変換サービスを使うときの注意
ブラウザだけで完結する手軽さは、明確な利点です。1 回きりの変換や、Blender を入れる余裕がない状況では合理的な選択肢になります。ただし、次の点は理解したうえで使ってください。
- アップロード=第三者のサーバーにデータを預ける行為です。 自作キャラクターや、公開前の作品データを扱う場合は、そのサービスの利用規約・保存期間・第三者提供の有無を確認してから使います。
- サイズや回数の上限があることが多いです。 無料枠を超えると変換できない、待ち時間が長い、といった制約が出ます。
- 色が失われる点は Blender と同じです。 これは変換ツールの性能差ではなく、STL の仕様によるものだからです。
- 変換結果を確認する手段が限られます。 向きやスケールがおかしくても、その場で気づけないことがあります。
スライサーが GLB を直接開ける場合
3D プリンタ用のスライサーによっては、STL 以外の形式も直接読み込めます。この場合、変換の工程そのものを飛ばせます。まず自分のスライサーが何を読めるかを確認する のが、いちばん無駄のない進め方です。手元のスライサーの対応形式を調べてから、変換が必要かどうかを判断してください。
3Dプリント用途なら3MFという選択肢
色を残したまま 3D プリントに向けたデータを渡したいなら、STL ではなく 3MF が候補になります。
3MF は「デザインアプリケーションが、他のアプリケーション・プラットフォーム・サービス・プリンタへ、フルフィデリティな 3D モデルを送るための 3D プリント形式」と説明されており、Materials and Properties Extension によってフルカラーとマルチマテリアルの定義に対応 します。2026 年 7 月時点の最新は Core Specification v1.4.0 で、ISO/IEC 25422:2025 として国際標準にもなっています(出典: 3MF Consortium - Specification、2026年7月時点)。
| 用途 | 適した形式 | 理由 |
|---|---|---|
| 単色で造形する | STL | 対応ソフトが最も広い。データが軽い |
| 色情報も渡したい | 3MF | 色・材質の定義を規格として持つ |
| Web で表示する・エンジンで使う | GLB | テクスチャを内包し表示前提の設計 |
3MF そのものの解説は3MFファイルとは?、実際に自宅のプリンタで印刷する準備は3MFファイルを自宅3Dプリンタで印刷する準備にまとめています。イラストから作ったデータを印刷に回すときの前提(厚み・自立性・素材)はイラストを3Dプリントするには?が参考になります。
変換後にチェックする3点
STL に書き出したら、そのまま印刷に回す前に次の 3 点を確認してください。
1. 寸法。 STL は形状だけの形式なので、受け取り側が想定と違う単位で解釈することがあります。スライサーに読み込んだ時点で、実際の寸法(高さ何 mm か)を必ず見ます。
2. 向き。 横倒しや逆さまになっていないか。Forward / Up の設定で調整できます。
3. 面が閉じているか。 3D プリントでは、立体が「中身のある閉じた形」になっている必要があります。穴が空いていたり面が裏返っていたりすると、スライサーがエラーを出したり、意図しない形で出力されたりします。Blender のリメッシュ機能(Voxel モード)は閉じた形を生成しようとするため、この修正に使われることがあります。
STLが重すぎるときの対処
STL は立体の表面を三角形の集まりとして記述する形式なので、面が多いモデルほどファイルが素直に大きくなります。AI で生成したモデルや、彫刻して作り込んだモデルでは、スライサーの動作が重くなるほど膨らむことがあります。
その場合は、書き出す前に Blender の デシメート(Decimate)モディファイアー で面数を減らします。公式マニュアルは「デシメートモディファイアーは、形状の変化を最小限に抑えながらメッシュの頂点数・面数を減らすことができる」と説明しています(出典: Blender Manual - Decimate Modifier、2026年7月時点)。
Collapse モードの Ratio(比率) が主な調整項目で、1.0 なら変化なし、0.5 なら面数がおよそ半分、0.0 ですべての面が削除されます。モディファイアーのパネルには、結果として残る面の数が表示されるので、数値を見ながら下げていけます。造形したときに見た目が変わらない範囲まで下げる のが目安です。細かい造形が潰れ始めたら、そこが下限です。
なお公式マニュアルは、このモディファイアーが編集モードでは変更を確認できない点にも触れています。オブジェクトモードで結果を見ながら調整してください。
よくある質問
STL に変換すると色が消えるのを回避する方法はありますか?
STL 形式のままでは回避できません。色の情報を持つ仕組みが規格に含まれていないためです。色も渡したい場合は 3MF など、色・材質の定義に対応した形式を使います。あるいは、STL で形を渡して造形後に自分で塗装する、という進め方もあります。
オンライン変換とBlender、どちらを選ぶべきですか?
1 回きりで、扱うデータの権利関係に懸念がなければオンライン変換の手軽さが勝ります。一方、自作キャラクターのデータを扱う場合、複数回変換する場合、変換前に形を直したい場合は Blender のほうが向いています。Blender なら書き出す前に寸法・向き・面の状態を自分の目で確認できるため、やり直しが減ります。
逆に、STL を GLB に変換して色を付けることはできますか?
形式としての変換は可能ですが、失われた色が戻ってくるわけではありません。STL には色の情報が入っていないため、変換後に自分でマテリアルを設定するか、テクスチャを描く作業が必要になります。Blender であれば、STL を読み込んだあとテクスチャペイントで塗ることができます。「一度 STL にしたら色は自分で作り直す」と考えておくと、期待とのズレが生じません。
変換したSTLがスライサーで開けません。
まずファイルが壊れていないかを確認するため、Blender で読み込み直してみてください。読み込めるなら形式の問題ではなく、スライサー側の対応(ファイルサイズ上限や、ASCII 形式への対応)が原因の可能性があります。書き出し時に Format: ASCII をオフにしてバイナリで出し直すと解決することがあります。
まとめ
GLB から STL への変換は、Blender で「インポート(glTF 2.0)→ エクスポート(Stl)」の 2 ステップで完了します。費用はかからず、変換前に形と寸法を自分で確認できるのが最大の利点です。オンライン変換サービスも手軽ですが、データを第三者に預ける点と、制限がある点を理解して選んでください。
そして、いちばん大事な前提は STL には色が残らない ということです。これは仕様であり、どのツールを使っても変わりません。色情報も一緒に渡したいなら 3MF、Web やゲームエンジンで使うなら GLB のまま——と、渡す先に合わせて形式を選ぶ のが、いちばん失敗の少ない考え方です。GLB という形式そのものについてはGLBファイルとは?で解説しています。




